彼と私の復活ストーリー~その2・素晴らしき出会い
小ゆびくんの訓練は、毎日続いた。
つまり、私は来る日も来る日も小ゆびくんと共に歩き続けた。
小ゆびくんが眠っていた間に、私のカラダに生じた不調を報告しながら、会話を弾ませお散歩を楽しんだ。
2015年。パンプスクリニックサロン&Steadyを経営する小野崎社長が、私を訪ねてやってきた。「&Steadyで細足さん用のスニーカーを作ったので、雅恵さんの足で履いてみて欲しい。そして、足の専門家としての感想を聞かせてほしい」と。
早速試してみる。
「小ゆびくん、どうかな?」
「いい!!いいよ!まーちゃん、この靴!!
これだったら、まーちゃんが歩くとき、左右に流れる体重の重みをこの靴が受け止めてくれるからね。オレ、まだリハビリ中だし、立てるようになったとはいえ、まだまだまーちゃんを受け止められるだけの力がない。
しっかり立てないオレの代わりに、靴が、まーちゃんを支えてくれると思う。これに決定しようよ! うん、これがいいな!」
「OK!小ゆびくん。じゃあ、採用決定ね^^」
&Steadyスニーカーは、単に試すだけで終わることなく、販売の代理店もできることとなった。
私の足の救世主となっただけでなく、靴がなくて困っている、私の周りの人たちの救世主となった。
ありがとう、小野崎記子さん。
2年前に出会った骨格誘導型3Dインソールに加えて、また素晴らしい道具を手に入れた小ゆびくんと私は、お互いの「キモチイイ」を共有しながら日々のお散歩に励んだ。
道具というものは、ほんとうに便利で、有り難い。
努力で叶わないことが、一瞬で叶う。魔法のようだ。
&Steadyスニーカーのおかげで、30年憂鬱だった私の足元は間違いなくハッピーに変わった。
あれから6年が経ったある日、小ゆびくんが、ポツリと漏らした。
「まーちゃん。オレ、もう限界…。もう無理だ。」
小ゆびくんのカラダをよーく観察すると、小さな魚の目ができている。お腹を見せてもらったら、お腹の皮が、三角に尖ってきている。
「え?? あれ?? これって いつから?」
「ここ一ヶ月くらいかなぁ。
まーちゃんさ、靴の着付けで工夫してくれてたでしょ?知ってるよ。
オレが立ちやすいように動きやすいようにって。靴の中の導線確保してくれてスペースを作ってくれてたけど、オレさ、実は、もうこんなカラダになっちゃったから。ホラ!見て!」
裸になった小ゆびくんのカラダは見違えるような凛々しさだった。
目覚めたばかりのあの頃は、華奢で弱弱しく覇気がなかった小ゆびくんのカラダには筋肉がつき、いつの間にかすっかり逞しいカラダに変わっていた。
「え?え? あれ? いつの間に?
ていうか、小ゆびくんって、そげん身長って高かったっけ?」
「アハハ! オレはもともと、身長あるんだよ。知ってるだろ?
まーちゃんが生まれた頃も、ヨチヨチ歩きの時も、オレが一番に、先頭切ってずっとまーちゃんのこと支えてきたんだぜ?
オレが意識を失って以降、寝たきりになってからはカラダ横たわらせて縮こまって丸まっていたからなぁ、たぶん、小さく見えていただけだよ。(笑)」
「たしかに!!!! ちっちゃい時は、小ゆびくんの力ってズバ抜けて高かったような記憶のある。お父さんとお相撲とるときとかさ、小ゆびくん頑張ってくれたよね~!」
「でしょー! オレはオレの元々の身長で、のびのびと動きたいからさ、まーちゃん、もうこの靴じゃ無理だ。オレのカラダには服が小さくてパツパツ。キツ過ぎる。」
「うん。そこまで立派に成長したら、そりゃそうだ(笑)」
「だろ?
だから、まーちゃん、頼む! オレの居場所作ってくんねーかな? もうちょっと広い部屋がいい。ダメ?」
「だねー。さすがにパツパツやもんね。しかし、よくここまで成長したねぇ!」
「そりゃあ、まーちゃん、特にここ一年は、今まで以上に歩く時間増やしてオレとの時間、ちゃんと作ってくれたからでしょう?
新宿の通勤散歩もあれはあれで良かったけど、高円寺に引越ししてきてからはやっぱり環境もいいしさ、気持ちいいし、歩きたくなるしな。ってことでオレだってオレの仕事やってきたってワケ。
まーちゃんを支えるのは、これからもずっとオレの仕事。オレの使命だからな!」
「おぉーー!小ゆびくん♡ なんと頼もしい言葉! 惚れ直すたい!
わかった。小ゆびくんがもっと、自由に、大胆に、ダイナミックに、思う存分に働ける居場所、私が用意するけん。」
「オレたちの旅はまだまだ続くぜ!!!」