8歳の本気

代表ブログ

2020年12月10日記事再掲


アシタスタイル代表の井手口です。

今日のブログは、先日ご相談に見えたK君(8歳)とのやり取り。

自身の足づくりに取り組まれているお母様から、「息子が、靴を履くと小ゆびが痛いというので見てほしい。靴が小さいはずはないんです。」とのご相談でした。お住まいは神奈川のうんと南の方です。

サロンの玄関で、K君のお顔が、すごーく暗い。

井「K君、どうしたの?元気ないじゃない」

K「来たくなかったもん」

井「どうして?足が痛いの気になるんでしょ?」

K「うん。足は痛いけど、都内に来るのが嫌だったの」

井「そうなんだ。東京までくるの遠いから?疲れちゃった?」

K「・・・・・」

井「嫌だったワケ、先生に教えてくれる?」

K君、目に涙をいっぱい溜めて、一生懸命私へ訴えてきました。

K「コロナが怖いから・・・」

井「そっか。コロナ怖いのね。東京には、人が、たくさんいるもんね。」

K「うん。だから、ほんとうは、先生が僕ん家へ来てくれたらよかったのに。」

井「そうだね、ごめんね、先生が行けなかったからね。来たくなかった理由、先生に教えてくれてありがとう。東京怖いのに、勇気出して来てくれてありがとう。じゃあ、K君が来たくなかった理由を先生に教えてくれたから、K君にお礼をしようと思います。コロナが怖くなくなる方法、知りたいですか?」

K君、目の色が変わって、パッと私の顔を見て、深く頷きました。

K「うん!知りたい!」

井「知りたいよね。OK!じゃあ、今から教えます。コロナはね、ぜんぜん怖くないんだよ。もし、K君のカラダにコロナが近づいてきても、K君がコロナと闘って、コロナを倒しちゃえばいいんだよ。」

K「へぇー」

井「K君はね、コロナと闘える力を、もう持ってるんだよ。」

K「そうなの?」

井「そう。K君は、風邪を引いてお熱を出したことがあるよね?熱を出している時が、K君のカラダと、カラダの中に入ってきた悪いやつらと闘っている時なんだよ。すごいよね? だから、ちゃんと熱が出せて、熱が下がったら、K君は悪いやつらに勝って、強くなったっていう事なんだよ」

K「そうなんだ!」

井「そうなの。高い熱を出せるカラダは、強いカラダなの。K君、もっと強くなりたい?」

K「うん!知りたい!」

井「強くなるためには、体温を上げること。体温を上げるためには筋肉を増やすことです。そのためにはたくさん運動をすること。たくさん運動したら、お腹がペコペコになるでしょ?ご飯モリモリ食べるでしょ?うんちもモリモリ出るでしょ?たくさん運動したら、ぐっすり眠れるでしょ?たくさん眠って、パッと目が覚めたら、頭がすっきりして、お勉強もスイスイできるよね?どうかな?」

K「うん!僕、給食でもお代わりするし、たくさん食べるよ。うんちは…ちょっと恥ずかしいけど…。ゴニョゴニョ…。運動は好き。だけど、疲れるのが嫌なの。お勉強も好きだよ。」

井「あ、ごめんごめん。恥ずかしかったね、うんちのこと言ってごめんね。K君は、たくさん食べるんだねー!イイね! そっかー、運動好きなのに、疲れるのね。わかりました。では、K君は学校の授業は何が好きですか?」

K「算数と図工が好き」

井「算数と、図工!良いですねぇ。算数は答えがはっきりわかるのが面白いよね。図工は何が得意なの?絵を描くこと?粘土とか、工作とかいろいろあるけど」

K「算数はね、計算が好きなんだよね。答えを出すのが。図工は、紙を切ったりするのが好き。箱とか作るのも!」

井「K君と先生は、気が合いそうね^^先生もね、算数も図工も好きよ。ところで、運動は何が好きですか?」

K「サッカー!」

井「サッカー、いいね!楽しいよね。じゃあ、サッカーやろうよ」

K「楽しいんだけどさー… 疲れちゃうの。」

井「疲れちゃう。そうなんだね。わかりました。ねえ、K君、疲れないでサッカーできたら嬉しいと思わない?」

K「うん。」

井「疲れる訳は、靴を履いた時に小ゆびが痛くなることと関係があります。」

K「そうなの?」

井「そうです。お靴を履いていないとき、裸足の時は、小ゆびは痛くないでしょう?」

K「うん、痛くない。お靴だと痛いの。」

井「ね?そうでしょ?だったら、お靴を履いていても、小ゆびが痛くないようにすればいいよね?」

K「できるの?」

井「できます。先生は、それができるから足の先生なんだもん。K君のママは、井手口先生が足と靴のことを知ってるから、今日は一緒に行こうって言って、わざわざ神奈川から東京までK君と一緒に出てきたんだからさ。K君の小ゆびが痛くなる訳を、先生は、K君に説明できるよ。知りたいでしょ?」

K「知りたい。先生、教えて。」

井「はい、わかりました。では、K君の足を、先生に見せてください。」

K「はーい」

K君はカラダの線が細く、当然、足もカラダ相当です。それでも親御さんは、ご自身が得た足と靴の知識から、ご子息の靴選びを一生懸命になさっていました。K君の華奢な足は、細めに選んだ靴の中でも前滑りを食い止めることは出来ていませんでした。選ばれていた靴は、最近のジュニア靴の流行り。脱ぎ履きしやすいように、ひもやベルトの代わりに、ゴムが入っているもので、履き口に一本だけベルトが付いているタイプです。

K君に骨格標本を見せながら、自分の足と比べてもらう。

井「K君、見えていないけど、足のゆびはここが根っこだよ。先生の手で、こうやって、足のゆびの根っこをぎゅって締めると、K君の足のゆびが動かしやすくなるのは分かりますか?」

K「うん。わかる。気持ちいいなー」

井「そうだよね、そうそう、それが正解です。気持ちいいのがだいじです。痛いと嫌になるから、いつも気持ちいいなーって思いながら靴が履けるといいよね?じゃあこれから、K君が履いてきた靴を、先生が気持ちいい靴に変えます。お外に行こう!」

K「OK!」

K君のママのフットチェック&フォローは、スタッフ貴子へ任せて、私はK君と外へ出ました。

右足だけ、ゴムになっている部分をしっかり引っ張って、足の形に添うように靴の着付けを行い、ベルトを締め、K君に右足と左足の違いを確認してもらいます。

井「K君、右と左、比べてみて、どうですか?」

K「右は靴がくっついてるね!左はブカブカ」

井「正解です!賢いねぇ!そうだよね。小ゆびが痛かったのは、靴の中で足が動いていたからです。足が前に滑っていたから、小ゆびがぶつかってたの。靴ひもをちゃんとこうやって締めれば、大丈夫なの」

K「ぜんぜん痛くないよ!いっぱい縄跳びできるね」

井「そうだね。今までは、靴が、K君の邪魔をしてたってこと。じゃあ、K君、自分でやってみようか?」

K「うん。」

K君は小さな手で、一生懸命ゴムを引っ張りながら言いました。

「先生。これさー、伸びるからダメだ。」

井「そうだよね。ゴムだもんね。K君どうする?ママにお願いして、ベルトのついてる靴に変えてもらう?それで2本か3本のベルトでぎゅって止めようか。それとも、いまの靴のゴムのところを、伸びない紐に変えるのもアリだよ。」

K「紐がいい。紐を自分でぎゅってしたい」

井「よし、じゃあ、ママにお願いして、紐に変えてもらおうね。

K君、今、先生とやったこと、ママにも教えてあげよう。どうして小ゆびが痛かったか、ママにどう言って教えてあげる?」

K「えっとねー。靴がブカブカだったから!」

井「そう!正解!それで?どうしたらいいの?」

K「ここをね、靴の中で滑らないようにぎゅってする。」

井「そうそう。正解」

K「それでね、ひもで、まとめるの」

井「そう!すごいすごい!『まとめる』っていう言葉、先生は教えていないです。K君が自分で考えた言葉だからね!K君は賢いね!よくできました。よし、部屋に戻って、ママに教えてあげよう」

K君は、私と一緒に体験し自分のカラダで感じた足のこと、靴のこと、理解したことを、自分の言葉で一生懸命にママに伝えていました。

「この子は、言葉が上手に出なくて、思い通りに話せない歯がゆさがあるんでしょうね、すぐに泣いちゃうところがあるんです。」サロンにいらした直後に、涙を溜めていた彼の姿を見て、こっそり親御さんが教えてくれていました。そんな憤りの中に生きている彼だからこそ、自分で理解し、自分の言葉で表現できた時の喜びは、ひとしおだったと思います。

さて、

ママへ小ゆびの痛かった理由を伝えたその後、K君は、私へ「靴ひも結びをやりたい」と自分から申し出てきて、玄関先で靴ひも結びの練習を夢中でやりました。なんと、1時間。華奢な背中は、前かがみの姿勢がどれだけ辛いかわかりません。途中で「はぁーーーーーーーー」と大きなため息をつきながら背中を伸ばして、時には、玄関先で仰向けに寝転んだりして。

「止める?」と聞くと、「ううん、もう一回やる!」と、何度も何度もやっているうちに、だんだんコツを掴んできます。初めは全然出来ないことが、少しずつできるようになると、面白くなってきます。コツを掴むと、ますます楽しくなってくる。夢中で取り組むうちに、「あ!もうこんな時間だ!」子どもの時間って、こんな風に過ぎて行ったなぁと、子ども時代を懐かしく思い出していました。

K君が、自分で気が付いて、「これって、リボン結び?」と訊ねてきたので「そうだよ」と答えると、「お家にお菓子の箱とかにもリボン結びがあるからお家でも練習するできるね!」と言ったので、そこで練習は終わりとなりました。

帰りの玄関で「ママ、蝶々結びできるようになったの、見る?」と、さっき練習してできるようになったばかりの靴ひも結びを、早速披露していました。

アシタスタイルでは「主体性」を重きに置いています。

「自分がやりたい」を軸にしないと、おかしなことになりますからね。それは子どもに限らず、大人でもおんなじことです。子どもたちが「やりたい」と望んだことを、一緒に考え、自分でできるように、助言し、見守るのは、大人の役割です。

「K君。今度は、たくさん走ったり飛んだりできるようになるから、カラダは疲れると思うよ。だけど今までの疲れ方と違うのは、それを乗り越えると、疲れないカラダになることです。しばらくは疲れるけど、続けるうちに疲れなくなりますからね。サッカーやって、たくさん運動してコロナに負けない強いカラダを作るんだよ。約束ね!そして、また、会いに来てください^^」

こんな風に、子どもと約束した時には、指切りげんまんをします。

子どもは、子ども扱いされることを、嫌います。私は、親になることが叶わなかったから、親の立場について述べることができません。その代わりに、子ども目線で述べることはできます。いつでも子ども目線になれる状態で、大人でいられる私は、幸せだなぁと思います。

大人は、大人の立場を主張しがちですが、そうじゃない。大人も、かつては子どもだったことを、忘れちゃならないと思います。幼稚な自分をちゃんと叱ってくれて道を正してくれた大人の存在を決して忘れないように、常に恥をかいてきた横着な自分を思い出し、いつまで経っても半人前の未熟な自分を戒めながら、未熟だけれども正直な子どもたちを鏡にしながら、コツコツ地道に生きればいいのだと、思います。

K君のママが帰り際に「息子がね、井手口先生と一緒に住みたいと言ってます。」とこっそり私へ耳打ちしてくれました。嬉しいよ、K君。ありがとうございます。こちらこそです。K君が私の先生ですよ。他人様はすべて、私の先生です。

たったの8歳でも、こんなに本気で生きている。

自分でできるようになろうと、必死で頑張っている。

大人のあなたは、どうですか?